ヘアケアのセラミドとは?髪と頭皮を守る“バリア成分”の科学

「セラミド配合シャンプー」「セラミド入りトリートメント」など、美容売り場やネットでよく目にする“セラミド”。スキンケアの世界では保湿成分として定番ですが、実は髪と頭皮にとっても重要な存在です。


近年の研究では、髪の内部にセラミド様脂質が存在し、ダメージ毛ではその量が著しく減少していることが明らかになっています。つまり、セラミドを補うヘアケアは「理論的な裏付け」があるケア方法なのです。

この記事では、セラミドの正体から、髪における役割、研究データに基づいた効果までを詳しく解説します。


セラミドとは?

セラミド(Ceramide)は、角質細胞の間に存在する「スフィンゴ脂質」の一種で、細胞間脂質の約50%を占める主要成分です。水分を保持し、外部刺激から守る“バリア”として働いています。


皮膚科学の分野ではよく知られていますが、実は髪の内部にもセラミド類似脂質が存在しているのです。

髪の毛は大きく分けて3層構造(キューティクル・コルテックス・メデュラ)から成り立っています。このうち、コルテックス細胞間に存在する脂質層にセラミドが含まれ、髪の保湿・柔軟性に寄与していると考えられています。


髪におけるセラミドの役割

1. 水分保持

研究によると、ブリーチやパーマ処理を行った髪は、健康毛に比べてセラミド含有量が大きく低下していることが確認されています。セラミドが減ると毛髪の水分保持力が落ち、乾燥・ごわつき・広がりにつながります。

2. バリア機能

髪は紫外線や摩擦、熱ダメージに常にさらされています。セラミドは細胞間を埋める“モルタル”のような役割を果たし、外的ストレスからコルテックスを守ります。

3. カラー保持効果

東京工業大学などの研究では、セラミドを補うことで染料の保持率が高まることが報告されています。ダメージで流出しやすい色素を守り、ヘアカラーの持続性を高めるのです。

4. 髪の強度と柔軟性

セラミドは髪の「しなやかさ」に直結します。セラミド欠乏毛ではヤング率(弾性率)が低下し、髪が折れやすくなるとされ、補修によって柔軟性が改善するデータがあります。


髪のセラミド不足のサイン

  • パサつき・広がりが気になる

  • 枝毛・切れ毛が増えてきた

  • ヘアカラーがすぐ退色する

  • 髪が硬くごわついて指通りが悪い

  • 頭皮の乾燥やフケが目立つ

これらは髪内部のセラミド不足の可能性を示す典型的なサインです。


ヘアケアに使われるセラミドの種類

実際のヘアケア製品には、いくつかのタイプのセラミドやセラミド様成分が配合されます。

1. 天然セラミド

ウマ脳や植物から抽出されるもの。人のセラミドと近い構造を持ち、親和性が高いですが、高価で酸化しやすいのが難点。

2. バイオセラミド(合成セラミド)

酵母や微生物を用いた発酵法でつくられるセラミド。安定性が高く、安全性にも優れるため、近年の主流。

3. 疑似セラミド

化学的にセラミドと類似の構造を持たせた成分。厳密にはセラミドではありませんが、髪のバリア機能を模倣する働きがあります。安価で大量生産が可能。

製品表示では「セラミドNP」「セラミドNG」「セラミドAP」などと表記されます。

  • セラミドNP … 水分保持に優れる

  • セラミドNG … バリア機能に強い

  • セラミドAP … ターンオーバー調整作用も報告

これらの複数種類を組み合わせた処方が、髪と頭皮により効果的とされています。


研究データから見るセラミドの効果

  • 花王の研究(2003年):ダメージ毛にセラミドを補給することで、水分保持力が改善し、毛髪の柔軟性が回復することを確認。

  • ライオンの研究(2012年):セラミド類似成分を配合したシャンプーの使用で、毛髪内部のCMC構造が整い、切れ毛が減少することを報告。

  • 資生堂の研究(2018年):セラミド含有の頭皮用ローションが、頭皮の水分量を有意に改善し、バリア機能をサポートする効果を実証。

これらの研究から、セラミドは「髪の化粧水」のように、水分と柔軟性を保つ上で欠かせない成分であることが裏付けられています。


セラミド配合のヘアケアアイテムの選び方

シャンプー

洗浄力が強すぎるとせっかくのセラミドも流れてしまいます。アミノ酸系シャンプー+セラミド配合の処方がおすすめ。

トリートメント

髪の内部に浸透して補修する役割。研究データでもトリートメントからのセラミド補給が最も毛髪柔軟性を改善することが示されています。

ヘアオイル・ヘアミルク

ドライヤーやアイロンの熱で失われやすいセラミドを補給。セラミドは親油性のため、油分系のベースに配合されると定着しやすいです。


セラミドを効果的に取り入れる方法

  1. 継続使用
    髪は肌と違って代謝がないため、一度失ったセラミドは自然に回復しません。継続的な補給が重要です。

  2. インナーケア
    こんにゃく芋や大豆、小麦胚芽などに植物性セラミドが豊富に含まれます。経口摂取によって皮膚の水分量改善が報告されており、頭皮環境改善を通じて美髪にもつながります。

  3. 頭皮ケア
    頭皮バリアの改善は、髪の根元から健やかに育てることにつながります。セラミド入り頭皮ローションは乾燥フケの改善に有効とされています。


セラミドケアが向いている人

  • 髪の乾燥や広がりが強い人

  • ブリーチ・カラー・パーマを繰り返している人

  • 年齢とともに髪が細くなり、ハリがなくなってきた人

  • 頭皮トラブル(乾燥・かゆみ・敏感)がある人


まとめ

セラミドは、髪と頭皮の「保湿」「バリア」「補修」に深く関わる成分です。ダメージ毛ではセラミドが失われ、乾燥・枝毛・退色といったトラブルが起きやすくなります。
研究データでも、セラミド補給が髪の柔軟性や水分保持力を改善することが実証されており、シャンプー・トリートメント・オイルなどでの継続的な補給が効果的です。

セラミドを“髪の必須栄養素”として捉え、毎日のケアに取り入れることで、未来の髪を守ることができます。